「人」が「人間」になる瞬間


——アドラーの教えから考える、経営と「才能の補完」の本質

年末年始、実家でふと目にしたアルフレッド・アドラーのカレンダーに、私の足を止める言葉がありました。

他者がいて、「人」は「人間」になる。

私たちの周りには他者が存在する。そして私たちは、他者と結びついて生きている。人間は個人としては弱く限界があるので、一人では自分の目標を達成することはできない。もしも一人で生き、問題に一人で対処しようとすれば、滅びてしまうだろう。

この言葉を読み、これまで私を支えてくれた家族、両親、ビジネスパートナー、そして仕事でご縁をいただいた皆様の顔が浮かびました。誰か一人でも欠けていたら、今の私は存在していません。

同時に、これは組織運営における「才能の活用」の真髄であると心の底から深く納得しました。


「人」と「人間」の間にあるもの

「人」という字は支え合っていると言われますが、アドラーは、他者との結びつきの中で初めて、私たちは社会的な存在である「人間(人の間)」になれると説きました。

ビジネスの現場も全く同じです。
一人の人間が持つ「才能」とは、「強み」と「弱み」の両面を指します。

人は皆、違うからこそ他者と結びつき、そこに信頼が生まれます。

  • 斬新なアイデアを生む才能がある人は、細かな事務作業に苦痛を感じるかもしれません。
  • 正確な仕組みを作る才能がある人は、ゼロから何かを創ることにストレスを感じるかもしれません。

もし、一人のリーダーがすべての完璧さを求め、一人で問題を抱え込もうとすれば、組織はいずれ行き詰まり、アドラーが言うように「滅び」——つまり、組織としての機能停止——に向かってしまうでしょう。

なぜなら、どれほど優秀なリーダーであっても、人間である以上、必ず「弱み」という限界を持っているからです。


「弱み」は「補完」を呼ぶための鍵

先日実施した研修で、参加者の方がおっしゃった言葉が深く心に残っています。

「意見が食い違った時、今までは『反対されている』と思っていた。でも、相手の才能を知ると、『自分が気づけない視点を補ってくれているんだ』と理解できた」

自分の弱みを自力でカバーしようと努力し続けることは尊いですが、それでは「強み」を活かしきる時間が奪われてしまいます。

これからの時代に必要なのは、「強みに専念し、弱みは、それが強みである相手に委ねる」という勇気ある決断です。

どれだけ苦手なことを克服しようとしても、それが「才能(強み)」として備わっている人には到底かないません。弱みを任せ合うことで初めて、リーダーは本来の役割である「ビジョンの実現」に全エネルギーを注げるようになります。


組織を「個の集合体」から「人間」の集まりに変える

私たちがご提案している「才能タイプ診断」は、単なるタイプ分けではありません。

自分と相手、双方が「強みと弱み」を併せ持つ不完全な存在であることを知り、相手の強みを借りることで、人と人の間に「信頼」という結びつきを醸成するための地図です。

現在、多くの職場で「多様性」が謳われていますが、ただ人が集まっているだけでは、それは「個人の集合体」に過ぎません。

  • 自分の得意なことで他者に貢献する
  • 自分の苦手なことは、それが得意な他者に委ねる

このように才能を交換し、結びついたとき、組織は初めてアドラーの言う「人間」の集まりとなり、一人では到底到達できない高い目標を達成できるようになります。

「なぜあの人とうまくいかないのか」という悩みは、あなたが自分の才能のフィルターだけで相手を見ているサインかもしれません。

他者の存在を、自分の欠点を強調する存在ではなく、自分の限界を突破させてくれる「パートナー」として捉え直してみませんか?

貴方の組織が、安心と信頼でしっかりと結びついた「才能組織」へと進化するための伴走者として、私たちは全力でサポートいたします。

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黒井 洋代